会計基準改正等で会計システムはさらなる高度化へ

昨今、会計基準は毎年の様に改正がなされており、複雑化の一途を辿っています。例えば、減損会計を初めとした現在価値計算。そういった複雑かつ煩雑な計算を要求される規定はシステムによる処理を前提にならざるをえません。従ってシステム導入/維持の観点においても、改正される会計基準に対して漫然と対応してしまった場合、サービスレベルの低下、システムの陳腐化を招き、最悪のケースではシステムで便利になるどころかさらなる業務の混乱を生むことにもなりかねないのです。
そのため、まずは「システムで対応することは何か」という洗い出しが必要になります。
しかし一方で「どのように」対応すべきかについては、逆にシステム対応しない範囲のほうに重点をおいて検討する必要があることを私達は往々にして忘れがちです。システム対応とシステム外での対応の双方について、適切な順序と適切なバランスで検討することが重要です。

じわじわやってくるIFRSに漫然とした姿勢が最悪の結果を招く

また、現在の大きなトピックとしてIFRS(国際財務報告基準)対応が挙げられます。IFRSが日本において強制適用されるか否かは現在検討されているところではありますが、グローバル化の進展もあり、IFRS適用済及び適用を検討中の企業は着実に増えています。ただ、IFRSについては、細則主義(=数値基準等の細かなルールが決められている)といわれている日本基準や米国基準とは異なり、原則主義が採用されています。原則主義とは、(例外的な規定もありますが)会計基準上、各企業が適切な処理を判断するための指針のみを示すという考え方となります。つまり、IFRSにおいては会計基準の趣旨を把握した上で、企業が主体的に具体的な会計処理方法を判断し、なぜその様な処理を採用したのかを説明できるようにしておく必要があるということです。その専門的な判断を行うには、企業全体での教育が不可欠であり、時間を十分にかけ対応を検討する必要があります。ただ、例えば日本基準とIFRSでどの様なことが異なり、それぞれどの様に扱うのかといったところまでは洗い出されていたとしても、トピックが多岐にわたることやスケジュールの観点等から、具体的にどの様に処理を行うかまで踏み込んでいないことも多く、極端な話、どの様な仕訳を起票するのか、注記も含めてどの様に財務書類を開示すべきかがそもそもはっきりしていない、という企業様も少なからず存在します。当然、仕訳だけが明確になっていればよいわけではなく、仕訳金額の把握方法や税務や原価計算も含めた影響調査等も必要となります。システム対応に至るまで事前に詳細まで精緻に検討されている企業様も多い一方で、上記のようなそうではない企業様においては、経理担当者等においてもどの様に処理すべきかの判断ができず、業務運用の直前になって、想定していた処理、運用が回らないといったことも起こっています。

過度な信頼や期待が失敗を招くこともある

そのように複雑化・多様化が進む昨今の会計実務においては、私達のようなシステムの導入側にも、広範な知見が求められています。それはIFRS対応に限ったことではありませんが、システム導入プロジェクトはスタートしたけれど、業務側での具体的な検討が遅れたまま、あるいは要件が曖昧なままの発進ゆえ、プロジェクトの遅延、最悪の場合、仕様まで曖昧なシステムの実現化に入ってしまうことがあります。お客様が過度にSIやコンサルタントに期待や信頼をよせる一方、当のSIやコンサルタントが「具体的に示された要件がそうだから」「あとはお客様側の問題だから」と考えていたとすれば最悪の結果しか見えないでしょう。
当社は「なぜ」を大切にする会社です。それゆえ安易にお客様からの過度な期待や信頼には応えられません。例えば「この処理が必要」と要求された場合、お客様はおそらく「その処理」を実現させるために、全体がうまくいくようにデザインしてくれるはずだと期待しても、悲しいかな、時にコンサルタントやSEは「その処理」を実現することしか考えていないのです。他のことは何も考えていません。しかしながら業務全体やこれまで営々と構築されてきたお客様のシステムの歴史や全体像の把握に限界がある私達に「すべて理解しろ」ということも土台無理な話なのです。
そして私達が「なぜ」を大切にする理由は、その土台無理な話に対するには「なぜ」を問うことしかないと考えているからです。具体的には私達は会計基準やお客様の諸規定のみならず、業務負荷、システム全体への影響、コストベネフィット等、種々の観点から掘り下げた上で、「その処理がなぜ必要なのか」ということをこれまでの経験や知見に基づいて検討します。場合によれば、お客様と協議の中で、不穏な空気が流れることもあるかもしれません。しかし「なぜ」を出発点に要求が正しく定義されていないゆえに、大きな手戻りの発生や、最悪の場合、プロジェクト計画の見直しを招くことすらあるため、私達はお客様のプロジェクト期間の日々の笑顔や顔色ばかりを重視するわけにはいかないのです。
一方、プロジェクトの進捗や問題の多くがコンサルタントやSI側ばかりにあるように考えられがちですが、多くの場合、実はお客様側にその根源的な問題が存在すると言っても極論でも暴論でもありません。要はその問題に正面から向き合い、恐れずに問題点を指摘し誠意を持って共に協力して対応できるか否かが重要なのです。
私達は「こうすれば進むのではないか」を提示した上で、進め方を共に検討します。例えば問題になっているものが会計基準の扱いであれば、会計・システム知識の両面からアドバイスを行うこともありますし、業務要件が曖昧であれば、システム側として必要な要件レベルや範囲を明示した上で、整理の方法を検討します。より高いレベルでお客様の業務や組織にフィットしたシステムを創りあげるため、私達はそれがどこに起因していたとしても問題から目をそらすことはありません。